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エチオピアの首都アディスアベバにて、理科教師として活動する青年海外協力隊員のブログです。

エチオピアが誇る世界遺産 岩窟教会群 「ラリベラの岩窟教会群 Rock-Hewn Churches in Lalibela」(1/3)

世界遺産への登録

 「ラリベラの岩窟教会群」はエチオピア北部のラリベラという町にある世界文化遺産。1978年(第2回世界遺産委員会)から登録が始まった世界遺産だが、なんとこのラリベラは最初に登録された12遺産のうちの1つ。ちなみに、「シミエン国立公園」も1978年に登録されており、最初の12遺産のうち2つがエチオピアからの選出だったのは驚きだ。

 さらに、1978年に登録見送りされた15件のうち9件がエチオピアの物件で、エチオピアが初期から世界遺産登録に積極的だったことが伺える(AU本部があるので、その影響もなきにしもあらずか?)。現在、文化遺産8と自然遺産1の計9件が登録されており、南アフリカ共和国とモロッコと並んでアフリカで最も世界遺産をもつ国となっている(日本は21件)。

 

ラリベラの歴史と岩窟教会群

 エチオピア北部のアクスム王国(紀元後1世紀〜10世紀頃、現エリトリアを含む紅海南部沿岸に位置)の衰退により、ラリベラ王はロハに遷都を行った。ロハの町は王の名をとって、ラリベラと呼ばれるようになった。イスラム教の拡大により聖地エルサレムへの巡礼が困難になったことからラリベラ王はこの地に「第二のエルサレム」を作ることを決意。その証拠に、ヨルダン川と名付けられた川が流れている。

 岩窟教会はエチオピア正教会の巡礼のために12〜13世紀頃に作られ、世界遺産に登録されている岩窟教会群は「11教会」として区別される。全て地面を下方向に掘って完全な建物の形をした教会を作っているMonolithic型(詳しくはティグライの岩窟教会群にかんする記事を参照)。

 「11教会」は第一グループ(北西グループ、ヨルダン川北)と第二グループ(南東グループ、ヨルダン川南)、そしてSt.Giyorgis教会(第三グループとも)に分けられる。

 

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Group1 (North-west)

 第一グループをチケットオフィスから近い順(道順)に示す。

1、Bet Medhane Alem (Church of the World Saviour;聖救世主教会)

チケットオフィスから最も近い場所にある。

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人の大きさと比べるとその大きさが分かる。

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窓はアクスム様式とギリシャ様式。赤い外壁も一部残っている。

・11教会の中でもっとも大きい。33.7 m(l)x 23.5 m(w)x 11.5 m(h)

アクスムにあるシオンの聖マリア教会を模して造られたとされる

・内部に空の棺が3つあり、聖書に登場するアブラハム・イサグ・ヤコブのものとされている

・内部は28本の柱で支えられている

・19世紀に修復された。その際、外壁を赤色で塗ったが今も北側にその一部が残っている

・非常に貴重な13世紀の書物が発見されている

 

2、Bet Maryam (Church of Mary;聖マリア教会)

聖救世主教会正面入り口から数mのトンネルを通るとMaryamが見えてくる。

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小さいがきれいな教会

・Maryamは聖母マリアの意。13x9x10m。

・12世紀から13世紀に装飾が施された。Group1では唯一色のついた壁画がある

・三つの玄関があり、東側の玄関は動物や花などが掘ってある。双頭のワシが掘られている箇所もある。

・人類発祥と週末を象徴する壁画の柱「Pillar of Light」がある(布が巻いてあるので見られない)

・キリスト昇天、ゴルゴザでの受難、三位一体のフレスコ画などがある

・最も信仰を集めていて、ティムカット祭でも多くの人が集まる

・聖救世主教会からは地下道でつながっているらしい

・プールは子宝を恵むとされていて、女性が水浴びをする

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内部は装飾がきれいに残っている(左)。"Pillar of Light"(右) 

 

 

3、4 Bet Meskel (Church of the Cross;聖十字架教会)、Bet Danagel (Bet Ghel、Church of the Virgins;聖処女教会)

 

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聖十字架教会

Maryamの北側がMeskel、南側がDanagel。Danagelは11教会で最も荒削りな教会。

 

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Danagel側の通路を抜けると、第一グループ最後の教会への道が見えてくる。階段を下りて右手に進む。

 

 5、Bet Debre sina-Mikael (聖ミカエル教会)and Bet  Golgotha(聖ゴルゴサ教会)Sellassie (Trinity;三位一体教会) Chapel

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正面の立方体の形をしているのがMikael教会。この裏にGolgothaとSellassie教会があり、内部は繋がっている。

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女人禁制のGolgotha内部の聖人のレリーフ(上)、3教会の構造(下)。

 

・11教会で最もミステリアスな構造をしていると言われるのが、この3教会。内部で繋がっている

・ゴルゴサ教会より奥は女人禁制。ゴルゴサにはSaint John, Saint Stephen, Saint George とSaint Kirkosといったエチオピア正教会の聖人たちのレリーフがある。

・ゴルゴサ(イエス・キリストが処刑された地)を想って造られた教会で、角ばった建造物には形の違う窓が3つあり「三位一体」を、くりぬかれたクロスは「キリスト」を表現している。

・Processional cross(伝統的な由緒ある十字架)のいくつかがある。

・ゴルゴザ教会の窓だけアクスム様式と少し異なる(ゴルゴザ様式)。

・司祭によると、三位一体教会がラリベラ王の墓らしい

・Bet Golgotha に接続した小さな教会がSellassie(=Trinity 、もっとも奥にある)

 

第一グループの終わり

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 Tomb of Adam(アダムの墓)があり、大きい石に十字架が掘ってある。アダムの墓の奥には、ウラエルの教会(洞窟のようなもので、11教会に含まれない)がある。アダムの墓を抜けると第一グループが終わる。